吉田工場長の部屋
(月刊ジャーマンカーズ2004年5月号掲載)


皆さんこんにちは。

いつもこの原稿を書いている我が家のパソコンが突然逝ってしまいまして、慌てて修復したものの、中身のデータの類は完全に飛んでしまいました。もちろん、こうして毎月書いている原稿も・・・あぁ、どこにもバックアップを取っていなかったのが悔やまれます。パソコンの本体はRAIDアレイの再構築やらうぃんどーずの再インストールやらで3日くらいかかってやっと修復して、めでたくこの原稿を書くことが出来ましたが、過去の原稿はもう手元にはありませんから、皆さんの手元にあるジャーマンカーズは大切にとっといてくださいね。

さて、先月はハルトゲくんの解体新書でしたが、今月は仕上がってきたヘッドなどを見て頂きましょうか。ヘッドボルトが無残にも折れてしまったためにシリンダーヘッドを外して歪み修正をする羽目になってしまったハルトゲチューンのヘッドは無事だったんでしょうか?じゃ〜ん(写真1)きれいに仕上がってきました。


歪は0,11mmくらいだったので修正研磨で対応できました。ヴァルブも研磨処理してヴァルブシートもカッティング、オリジナルのハルトゲチューンに負けないよう徹底的にやらせていただきました(写真2)


惜しいのはカムシャフト(写真3)ハルトゲオリジナルのカムが見事に削れてしまっているために交換部品を探したんですが、製造から10数年あまり経過したチューニングパーツなどどこにも存在しておらず、おまけにカムプロファイルも全く分からないので仕方なくBMW純正2,5l用のカムを入れることにしました。まぁいかにチューンされたカムであっても磨耗していたのでは性能も何もありませんからね。

そんなこんなでヴァルブとカムが組みあがったヘッド、きれいですね(写真4)やっぱこうじゃなくちゃ、BMWのエンジンは。

ガビガビに傷ついたロッカーアームももちろん新品に(写真5)
このロッカーアーム、よぉ〜っく見てみると形状が変わってますね(写真6)左が元々ついていた物、右が新品です。ちょっと太くなっていますよね。私のエンジンもこの細い部分からぶぁきっ!と折れてしまいましたから、これは強度対策をしたんでしょう。マイナーなところですが重要ですよね。
対策といえばヘッドボルトも形状が違います(写真7)新品は首下が途中から細くなっていますね。これは塑性域角度法によって締め付けるためボルトがこの細い部分からある程度伸びるようになっているんでしょう。頭が取れてしまった旧いボルトはボルトが伸びるストレス、つまり応力が首下に集中してしまったと思われます。先月も書きましたが正規輸入車は既にリコールによって回収されていると思われますので安心してください。
ヘッドはピカピカに仕上がりましたから、ブロックもちょこっとキレイにしてあげましょうか(写真8)
美しく曲げられた等長エグゾーストマニフォールドはおいといて、ブロック面とピストントップをキレイにして、クーラントホースの類も全て交換しました(写真9)本当はこのクーラントホースがあちこち漏れていたので交換するだけの予定で入庫したこの車ですから、ヘッドが下ろされているうちに交換してしまいます。
外したホースを上からのぞいてみると・・・錆だらけ(写真10)握っていると中でくしゃくしゃと錆が剥がれる音が聞こえてきます。もう限界ですね。こんな状態ですから、もちろんウォーターポンプとサーモスタットも交換します。今この原稿を書いている時点ではやっとヘッドがブロックに搭載された状態でまだエンジンがかかるまでには至っていませんが、この本が店頭に並ぶころには快音を轟かせている事でしょう。
私も楽しみです。
ん?タイヤが変だぞ?

最近めっきり減ってきてしまったE30メンテ、と思っていたらこんな形で入ってくるとは・・・こういう仕事が実は一番好きだったりします。この年代の車はやっぱり「味」がありますよね。

それではまた。

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