吉田工場長の部屋
(月刊ジャーマンカーズ2005年3月号掲載)


ん?タイヤが変だぞ?
あぁぁぁ・・・なんで木曜日の夜に雪なんか降るんだよぉぉぉ。毎週楽しみにしていたBS-iの深夜番組 がぁぁ・・・雪で映らないじゃないかよぉぉぉ・・・・

何だか今年に入ってからわたしゃあ運が悪いですよ。いきなり3回目のロッカーアーム破壊もそうだし、再放送しないBS深夜番組に限って雪で録画失敗するし・・・ま、気を取り直してお仕事しましょうかね。

さてさて、先月はめでたくウォーターポンプの組み付けが終了したM5のエンジンに冷却水を注入し、エンジン始動・・・よしよし無事かかったぞ。快調快調!よぉーしエンジンを冷ましてと、冷却水のレベルをチェックして・・・あれれ?なーんか減ってんなぁ。どこからか冷却水が漏れてるのかなぁ?ううーん、どこも漏れてないなぁ。

漏れてないのに減ってゆくお水・・・・ま、まさかね、そう、まさか・・・ねっ。
一応エンジンオイルを点検してと。

あ゛―――――――――――――――――――――――――(写真1)
エンジンオイルがぁぁぁぁ!

どうやらオーバーヒートの影響で恐怖のシリンダーヘッドガスケット抜けが起きてしまったようです。E34M5に搭載されているS38エンジンはベースがM30で、通称ビッグシックスと呼ばれているこの直列6気筒エンジンは全長が長く、ただでさえ熱負荷でヘッド歪みが生じやすいのに、メーカーによって更に徹底的にチューニングされたS38は時としてオーバーヒートがクリティカルなダメージを引き起こしてしまいます。

はらひれはらほれ(@_@)仕方がありません、分解修理と参りましょうか。

まずはエンジンの補機類から外します。INマニのサージタンクを外すと独立スロットルバタフライが誇らしげに見えますね(写真2)

なんで独立かというと、サージタンク入り口に1個だけスロットルバタフライを設けたほうが確かにコストはかからないし、独立スロットルのように各気筒の同調を取る必要がありませんし、パーツ点数が減るので信頼性も上がります。が、空気は重量物です。エンジン本体から遠いところでガバっと通路を開いてもエンジンに大量の空気が届くのに時間がかかってしまいます。この「時間」がレスポンスにえらく影響してしまうので、出来るだけエンジンの直前にスロットルを設けるのが理想、なわけです。贅沢ですねぇ。

エンジンの圧縮抜けによるガスをエンジンに吸わせて有害物質を低減させるブローバイホースを外すと、水がたまってしまっているのがお分かりいただけるでしょうか(写真3)

独立スロットルを外すとシリンダーヘッドのインテークポートがお目見えです(写真4)
いやーインテークヴァルブにまっすぐ向かっているインテークポートが美しいですね(写真5)機械加工だけでこの形状を作るのは大変だと思います。まぁもっと上にはアルピナやハルトゲのような職人の手作業があるわけですが。
インテーク側を全て外したら排気側も外しましょう(写真6)
シリンダーヘッドカバーを外すと・・・あらら、エンジンオイルがコーヒークリーム状に変わり果てた中にうずくまるカムシャフト(写真7)さぁてここからが本番です。このS38エンジンはシリンダーヘッドが2ピースで構成されています。

なんで2ピースかというとカムシャフト剛性を高めつつ、分解組み付けを容易にし、加工もしやすいと、こんな理由からですね。分解に少々手間取りはしますが、いつもは重たいカムシャフトをつけたまま「エイヤッ」と持ち上げなければいけないはずのヘッドを、このエンジンの場合は少しずつ分解しながら降ろしていきますから体力的にはかえってラクだったりします。

カムを外して上側のシリンダーヘッドを丸裸にするとこんな感じ(写真8)
カムシャフトとスプロケットを組み付けるとこんな感じ(写真9)です。
上側のヘッドを外すと当然の事ながら下側にヴァルブのくっついたヘッドがお目見えします(写真10)ヘッドボルトを緩めてと、おや?EX側のヘッドボルトが全て緩んでいる!熱負荷でヘッドに歪が発生しているようですね。
さて降ろしましょうか。何もついていないとはいえ、やっぱり金属の塊は重たいです(写真11)
降ろしたヘッドを調べてみると、特定のシリンダーにオイルラインとウォーターラインが貫通している場所が確認できました(写真12)
貫通していない場所と見比べると一目瞭然です(写真13)
さらにヴァルブも外してみましょう。インテークヴァルブのいくつかが完全に閉じなくなってしまい、隙間が出来てしまっています(写真14)ヴァルブシートリングにキレイな光の輪が出来ずに、一部分だけ焦げてしまっているのがお分かりいただけますか?
きちんと密着していればこんな感じです(写真15)このヘッドはこのあと加工業者様に持って行き、歪計測を行い修正が可能かどうか調べた上で再加工が決定されます。再加工となれば、シートリングも再カットとなります。

あぁ、ダレかボクの録り損ねた番組、持ってないかなぁ・・・えっ持ってるの?貸して貸して!なぁーんて貸してもらうと現在では立派な「著作権法違反」らしいですね。例え個人が趣味で録画したものであっても勝手に配布すると「私的利用範囲」を超えてしまうんだそうです。

まぁ現在では大概のドラマやアニメはDVDで販売される「商品」だからして、著作権にシビアになるのも分かるんですが、これがどうして住みにくい世の中になりましたねぇ。昔は地方紙の「譲ります、譲ってください」欄に「XXドラマ全話収録ビデオあり、状態良好、価格応相談」なんてありましたよねぇ?あれ、現在ではやってはいけないんですよね。それどころか、録画した番組の保存方法まで場合によっては制限されたり、CMカットすると著作憲法違反の疑いがあるとか言われたり、

もぉ堀江さん何とかしてくれませんかねぇ・・・やっぱ買うしかないんでしょうね。まぁ買えば見られるだけ現在はいいのかもしれません。

それじゃ、また。

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