吉田工場長の部屋
(月刊ジャーマンカーズ2004年3月号掲載)


いやいや、みなさんこんにちは。毎度おなじみわたくしめのワンルームにようこそ。

いやー先月にお伝えした318isもどーなることやらと思いましたが、ヴァルブがピストンに干渉することもなく、ノッキングに悩まされることもなく無事エンジンも始動いたしまして、めでたしめでたしだったんですが、ちょっと失敗したナと思ったのは圧縮比アップで太った中低速を高回転よりに振ってあげようと思いっきりヴァルブタイミングを高速側に振ってあげたら・・・確かに高回転は良く回るようになったんですが、中低速があまりにもフツーになりすぎて変化の分かりにくーいエンジンになってしまったようで、担当のタニツさんは「思ったほどの変化ではなかった」などとおっしゃる。

つたえふぁくとりーのしゃちょーさんもほぼ同意見で「あれじゃあ普通の人はわかんなかもネ」だって。思えば以前このコーナーで取り上げたおきゃくさんの318isはイタズラに高回転オンリーの設定ではなくて、素直にちょこっとだけ高速よりにセッテイングしたから中低速も程よく高速もけっこう元気、っていうナカナカいいエンジンになってくれたので、何事もスケベ根性はヤメてホドホドにするってのが重要って事ですかねぇ。


ん?タイヤが変だぞ?
まぁ、おかげで結構私としてはいい勉強にもなり、また今後はこのエンジンにおいて万一オーバーヒートでヘッドをおろさないといけない事態になってしまった場合でも修理ついでにパワーアップできるオプションが生まれたワケで、故障というネガティブな要素をパワーアップというポジティブな要素に変更できるというのは、直して元通りにするというよりも、もとよりいい状態にするって事になりますから、故障をきっかけに少しずつ自分好みの車に仕上げていくというのもヨロシイかと思います。

早速長期レポのisはヴァルブタイミングを戻して、中低速もよし、高回転も気持ちイイエンジンに仕立てて、もいっぺんタニツさんに試乗いただこうかと思ってますから、皆さんもお楽しみに。

で、今回のお話はですね、普段つたえふぁくとり〜に入庫していただいている車両から「へぇ〜こんな事もあるんだネ」というネタを拾ってお伝えしたいと思います。


まずはE32 740iL。この車はパワーステアリングホースが油漏れを起こしていて、V8エンジンが邪魔をして全くホースが外れないどころか見えない!状態で仕方なくエンジンメンバーをステアリングギアボックスごと取り外すハメになった車両で、この作業で私ではなく佐藤店長が死ぬ思いで(笑)やったものなんですがその時に都合エンジンマウントも外すことになりまして、外したエンジンマウントを見てビックリ(写真1.2)
エンジンマウントは中の液体が完全に漏れだして、剥離までしてもはや振動を吸収する役目を完全に失っておりました。重たいV8エンジンだけに負担も大きかったのでしょうか、いかに技術的に進化した液体封入式エンジンマウントであっても寿命は確実に存在する、という証拠が出てきましたね。走行距離が7〜8万キロに達した車両で、最近どうもエンジン振動が気になるなぁ、という人はマウントを交換するといいかもしれません。



次のお出ましはE36 318ti。通称コンパクト。この車、例のシリンダーヘッドのラバーガスケットがボロくなってしまったおかげでオーバーヒートしてしまったんですが、実は水漏れは他からも発生していたんです(写真3.4)
白く輝くマイクロフィルターの周囲にうっすら白くホコリのような“すじ”が見えるのがお分かりいただけますか?これ、実は水漏れのアトなんです。どこから漏れているかというとえんじんの温まった冷却水を車内の暖房に使うため冷却水を車内のヒーター・コアに導くためのヒーター・パイプの接合点にあるOリングから漏れちゃっているんですね(写真5)
このOリング、外して新品のOリングと比べると一目瞭然(写真6)固くなったOリングはもはや柔軟性を失い水漏れを止める役目を放棄した状態でした。
このOリングが弱いのは318tiだけで、BMWいぢりの間ではかなり有名なトラブルなもんだから、tiユーザーは悪いことは言わないから車検ごとにこのOリングだけでも換えとけっ!って言うくらいのシロモノです。で、このOリングを交換するとき必然的にマイクロフィルターもお目にかかる事になりますから、ついでに交換しておくといいでしょう(写真7)
もちろんヘッドもオーバーホールする事になったこの車はシリンダーヘッド面研磨もするんですが、完成後はこのオーナーのお母様が乗られるというワケなので街で扱いやすい中低速重視のセッティングにしてお渡しする予定です。そんなこんなでアノisとの勝負はまだまだ続くのであります。

それではまた

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